仕事用エージェント型ツールの設計方法


Gemini Enterpriseチームが、複雑で複数エージェントが関わるワークフローを、シンプルで直感的、かつ信頼性の高いものにするためのアプローチについて紹介します。
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ヒーローイラスト: Pedro Sanches
エージェント型エクスペリエンスを設計することは、AIを親しみやすく感じさせつつも、その強力さを伝えるというバランスを取ることが求められます。ビジネスの文脈では、課題はより困難になります。複雑で協力的な高リスクの作業を直感的に感じさせるだけでなく、ユーザーの信頼を得る必要があるからです。Google Cloud AIチームは、Gemini Enterpriseを設計するにあたり、まさにこの課題に取り組みました。UXとデザインのシニアディレクターを務めるSheta Chatterjeeは次のように述べています。「ユーザーの焦点は常に目標に向けられるべきであり、AIの管理に向けられるべきではないというのが、私たちの指針です。同時に、ユーザーがいつでも介入できることを明確に示すことも極めて重要です。人々は機密情報を扱い、実際のビジネス成果に影響を与える決定を行っているのですから」
このことを念頭に置いて、Shetaとそのチームは、チャットインターフェース、ビジュアルダッシュボード、カスタムエージェントビルダー、共有プロジェクトスペースなど、ツールのあらゆる部分において、シンプルさと透明性を最優先しました。各決定の背景を詳しく説明しながら、チーム間の分断化、ツールの多用、競合する締め切りといった、私たちが仕事で直面する課題を先回りして解決しつつ、人々の作業の流れを妨げないようなエージェント型エクスペリエンスを、どのように構築したかを、Shetaが明らかにします。

あなたのチームは、一般消費者向けアプリGeminiを基盤として開発を進めています。これらのエクスペリエンスを、つながりを感じさせつつも、それぞれが独自の個性を持つように仕上げるために、どのようなアプローチをとりましたか?

大まかには、1つのブランドのように感じられるべきです。きらめきアイコン、ユーザーを導くグラデーション、丸みを帯びたシェイプ、そして意図的なモーションといった視覚的要素が、2つのエクスペリエンスに統一感をもたらしています。両者を区別するのは、機能のレベルです。たとえば、プロンプトボックスは一般消費者向けアプリと一貫性がありますが、プロンプト中にコネクターをより前面に押し出します。Google Workspace、Jira、Notionなど、ビジネスで使用するツールとの連携は、アシスタントが適切なコンテキストをすべて把握できるようにするために重要です。

私たちはプロンプトボックスだけにとどまらず、さらに先を見据えたいと考えました。仕事の未来は、単一のコマンドから、オーケストレーションへと移行しつつあります。複数のツールを使用し、複数のソースからデータを取得し、複雑なタスクを複数のエージェントに委任しています。そこで私たちは、AI受信トレイを導入しました。これは、エージェントが現在取り組んでいる作業、完了した作業、そして人の介入が必要な作業を一目で確認できる、常に更新されるダッシュボードです。たとえば、マーケット分析が明日の朝までに必要であり、すでにレビュー可能な状態にあることが一目でわかります。視覚的なワークフローは、やり取りを繰り返すチャットスレッドというよりも、チームでの進捗確認のような役割を果たします。


それはもう1つの重要な違いです。これは個人の生産性向上ツールではありません。チームでのコラボレーションの必要性が、どのようにデザインに影響を与えたのでしょうか?

私が最も誇りに思っている設計上の判断の1つは、個別のチャットスレッドから、AIがチームの一員として振る舞い、タスクを実行したり、議論を要約したり、プロジェクトファイルを取り出したりする、永続的で共有されたプロジェクトスペースに移行したことです。

これらすべてが、チーム全員が閲覧・参照できる共有スペースで行われ、すべてのリクエストには担当のチームメンバーが明記されます。このシンプルな設計上の判断は、責任の所在を明確にする上で、また他のメンバーがエージェントの行動の背景を理解する上で極めて重要です。アシスタントがコラボレーションスペースに常駐することで、チーム全体の知識のギャップを埋めることができます。そのため、エンジニアが技術仕様書をアップロードすれば、デザイナーは自らその仕様書を探し回る必要なく、詳細を尋ねることができます。今日の業務における最大の問題は分断化ですが、AIは、信頼できる唯一の情報源を作り出します。AIをこのように自然に統合することで、単なる生産性向上ツールから、チームのインテリジェンスを増幅する存在へと昇華させることができます。


AIをこのように自然に統合することで、単なる生産性向上ツールから、チームのインテリジェンスを増幅する存在へと昇華させることができます。

AIがユーザーに点と点を結びつける手助けをしながら、干渉しすぎないようにするには、どうすればよいと考えましたか?

本当の意味でエージェント的なシステムには、ユーザーのニーズを先読みする能力が求められます。ですから、私たちはAIが能動的なパートナーとなるよう心がけています。現在、干渉しすぎないナッジ(後押し)の実験を行っています。たとえば、「プロジェクトの締め切りが近づいています。進捗報告のドラフトを作成しましょうか?」といった感じです。あるいは、チャット中にAIが「お伝えしたいことがあります」と手を挙げるような形はいかがでしょう。こうした提案は、邪魔に感じられるのではなく、魔法のように感じられるべきです。そこで、毎日の作業にもっと直感的に感じられるように、デザインパターンを急ピッチで進化させています。シームレスなツール統合をデザインの基盤とすることで、AIがユーザーの作業環境を深く理解できるようにしています。

エンタープライズユーザーも、AIに機密情報を安心して委ねられると感じる必要があります。制限を感じさせずに、どのようにコントロールとガバナンスの感覚を組みこむのでしょうか?

透明性がすべてです。一般消費者のアプリは、何をしているのかをリアルタイムで説明しますが、エンタープライズ版では、その考え方をさらにきめ細かなレベルまで拡張しています。たとえば、エージェントに最近リリースされた製品の状況を追跡するよう依頼すると、エージェントは、プロジェクトの理解、SurveyMonkeyでの顧客フィードバックの分析、Jiraでのサポートチケットの分析、そして重要なポイントをまとめたメモの作成といったプランを示します。これは、ユーザーが最終的な決定権を持つことを確実にするために、あえて立ち止まらせる、意図的に設けられた間です。回答には常に情報源が明記されているため、ユーザーは情報がどこから来ているのかを正確に把握できます。
カスタムエージェントを作成する際、当社のAgent Designerを使用すると、「ハーネス」を定義できます。これは、エージェントがアクセスできるデータ、使用できるツール、および許可を求めるために停止しなければならないタイミングを指定するガバナンスレイヤーです。これにより、セキュリティとロジックを直接ユーザーの手に委ねることができます。


エージェント型AIの機能は絶えず進化しています。何を開発するかどう決めるのでしょうか。また、これほど多くのプラットフォームにわたって一貫性を保つにはどうすればよいのでしょうか?

Figmaは、初期のコンセプト段階からリリースに至るまで、私たちの信頼できる唯一の情報源です。フロントエンドではFigJamを使用して、ユーザーの目標を可視化し、ユーザージャーニーを理解し、アイデアの投票を行っています。その後、より詳細な作業に移行します。
変更を検討する際は、追加したいすべての要素に対して、その変更がどのように波及し、スケールしていくかを考慮しなければなりません。というのも、これはまだジャーニーの始まりに過ぎないからです。この規模で運用されるシステムにとって、Figmaでデザインシステムを構築し、ドキュメント化し、維持することは非常に重要です。Figmaを使えば、バイブコーディングでは不可能なレベルの詳細な設計が可能になり、細部の調整や複雑な状態の管理も行えます。また、信頼できる唯一の情報源があるため、コンシューマーチームと相互参照を行い、一方で成功した実験がもう一方にも確実に反映されるようにすることができます。


AIデザインの現状について、またデザイナーに何が求められているかについて、全体的な見解をお聞かせください。

私たちは今、グラフィカルインターフェースが登場する前の、コンピューターがコマンドラインで動作していた時代と少し似た状況にあります。これまで常に重要視されてきたデザインの原則、すなわち、明快さ、情報アーキテクチャ、信頼性、ビジュアルの洗練さは、今もなお失われていません。開発のスピードは驚くほど速いですが、ユーザーが実際にどのAI製品を使うかを決めるのは、細部へのこだわりです。
AIをめぐる新たな論調は、正直なところ、少し威圧的に感じられることもあります。「エージェント」や「オーケストレーション」といった専門用語に惑わされがちですが、エンドユーザーが求めているのは、単に自分の仕事をこなすことだけです。物事をシンプルに、人間味豊かに、楽しいと感じさせる。それこそが、デザイナーが得意とするところです。迅速なプロトタイプ作成が主流となり、本当に正しいとは限らないものまで簡単に作れるようになった今、クラフトとセンスはかつてないほど重要になっています。


