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ブラウザで会いましょう

Dylan Field、 Figma共同創業者兼CEO

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共同創業者のEvanと私が5 年前にFigmaをクローズドベータで立ち上げたとき、私たちはブラウザにすべてを賭けました。学校ではGoogle Docsを使い、家に帰るとバーチャルワールドに浸っていた多くの人達と同様に、私たちもインターネットネイティブなソフトウェアがコラボレーションや透明性、アクセスといった価値を体現していることを直観的に理解していたのです。友人やクラスメート、インターン先の同僚など、周りの人達の多くがこうした価値を共有していたため、当然のことだと考えていました。

しかし、私たちはあることに気づいていませんでした。Figmaの立ち上げ自体が異端で、トップダウン式の縦割り意思決定モデルに対する世代間攻撃であり、多くのデザイナーのアイデンティティに対する挑戦であることを。ブラウザでデザインソフトウェアを構築する可能性をすぐに理解してくれた人もいましたが、他の人達からは否定的な反応がたちまち沸き起こりました。これがデザインの未来なら転職する、と言う人さえいました。

変化に対して危機感を持つことは、人間として当然です。これまでオフラインの職人技であったものをブラウザに移行することは、多くの人にとってショッキングなことです。その不安はもっともなものでした。多くのデザイナーが、透明性が高まればデザインプロセスの神秘性が剝げ落ち、過度な管理が行われ、締め切りが厳格化すると感じていたのだと思います。多くの人にとって、Figmaに他人を招くということは、暗黙のうちにコントロールを失うことを意味します。(デザイナーがどのようにレイヤーを構成しているかを見たことがあれば、デザイナーがいかにコントロールを好むかわかるでしょう!) 最終的には、アクセスが増加するとともに、「誰もがデザインできるのならデザイナーである意味はいったい何なのか?」という、根本的な疑問が生まれるのです。

当初、私はFigmaのクローズドベータ開始に対する否定的な反応を理解できませんでした。ファイルの一元管理、クロスプラットフォーム対応、マルチプレイヤー編集など、明らかな利点しか見ていなかったからです。今では、ブラウザのパワーは、従来の文化をもくつがえす大きな変化であり、恐るべきものとなり得ると理解しています。ブラウザは元来マルチプレイヤーです。アクセスに対する考え方の転換を迫るものです。高価なハードウェアも必要としません。とりわけ閉塞的で、孤立することが当然のような環境で、共に働くことができるよう私たちを後押ししてくれます。

FigmaのCEOとしての仕事の醍醐味の一つは、人類学者としての役割です。過去5年間で、デジタル空間での共同作業をとおして、チームの考え方が「私のアイデア」から「私たちのアイデア」に変わることを、身をもって体験しました。これには根本的な変化が必要で、私たちの多くはまだそのレベルの信頼と透明性に追いついていません。デザインは多くの点で非常に個人的なものであり、その作品を他の人に公開し、それを基にリミックスできるようにすることは、自分自身の一部を公開するようなものだと感じるかもしれません。しかし、だからこそ、この変化はとても重要なのです。

大局的に見れば、ブラウザの利点は、ワークフローの改善やコラボレーションの向上にとどまりません。ブラウザで仕事をすることは、物理的なスペースからデジタルスペースへと移る数十年規模のグローバルな変化の一環であり、COVID-19によって大きく加速されました。物理的なスペースと同じように、デジタルスペースは私たちがお互いにつながることができるよう支援してくれます。物理的なスペースと違って、デジタルスペースには壁がなく、デフォルトでは階層がありません。誰もが一緒にブレインストーミングをしたり、構築したり、遊んだりすることができるのです。

マーシャル・マクルーハンは、『Understanding Media』の中で、「すべてのテクノロジーは、私たちの肉体や神経系の延長である」と書いています。しかし、Figmaの良さは、私たち自身の肉体のデジタルな延長を超えるものです。エゴを捨て、他の人達と意識を共有することへの招待状と言えます。それは、創造性の厄介な部分を受け入れ、失敗を意に介さず、その過程でより多くの人々を巻き込むチャンスなのです。

Figmaのビジョンは、すべての人がデザインにアクセスできるようにすることです。もし私たちが成功すれば、Figmaを履歴書のスキルとして記載することは、Google Docsの熟練度を強調するのと同じくらいばかげたことになるでしょう。ブラウザのおかげで私たちはこのビジョンに近づいていますが、まだ多くの仕事が残っています。アイデア出しから制作、想像から現実まで、デザインプロセスのあらゆる場面で、Figmaがさまざまな役割をサポートできるようになることを願っています。

このレベルのオープン性とアクセスが、デザインや製品開発の枠をはるかに超えて広がっていくことを願っています。ハードウェアや特殊なツール、肩書きが、その進歩を阻むことは許されないのです。私たちはテクノロジー開発者として、より多くの人が私たちのプラットフォームを使えるようにする責任があります。この5年間で私が見たのは、ブラウザはそのインパクトに火をつけるメディアであるということです。もしあなたがソフトウェア開発者なら、同じ精神で構築してほしいと考えます。私たちのチームや製品、さらに言えば私たちの社会が、この取り組みによって良くなっていくはずだからです。

この記事へのご協力とご意見をいただいたAlia Fite氏、Craig Mod氏、John Lilly氏、Kevin Kwok氏に感謝いたします。